こころの案内人のブログ

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カミングアウト ~クローズゲイで生きてきた私の場合~

 カミングアウトについて悩んでいる方にとっては身も蓋もない言い方になりますが、カミングアウトするかどうかは個人で決める問題だと私は考えています。それは、一人ひとりの考え方や取り巻く環境・状況が異なっているからです。ただ、共通して大切なことは、自分なりの物差しをきちんと持っておくということ。物差しを持つということは考えに軸があるということで、環境や状況を落ち着いた目で捉えることができます。
 私は基本クローズで54年間生きてきました。今回は、私がカミングアウトについてどのように考えてきたかを書かせていただきます。体験談の域は出ませんが、少しでも参考になれば幸いです。

両親に対して

  
 

 私は、両親(父はすでに他界)にカミングアウトはしていません。それは、多少の不都合はあったものの、わざわざカミングアウトする必要がなかったからです。
 私は一人っ子なので、一般的には結婚するかしないかというのは大問題でしょう。ところが、私の両親は、結婚について質問したり迫ってきたりすることはありませんでした。両親の間でどのような会話がなされていたのかは分かりません。おそらく、親戚からは何か言われていたでしょう。しかし、私が東京での就職を決めた時から、それぞれ別の道で生きていくと両親(特に母)は思ったようで、帰郷を促すことはなく私の私生活について何も言いませんでした。

 こうなると、私からわざわざカミングアウトする必要もないわけです。もともと、私は両親に対しては「自分がゲイであること」を理解してもらおうとは全く思っていませんでした。仮に結婚について追及されたとしても、ゲイだから結婚しないとは言わないつもりでしたし、ゲイを疑われても認めないつもりでいました。両親に嘘をついてよいのかという指摘もあると思いますが、本当のことを伝えて良い方向に進むという展望があれば伝えますが、そこは慎重に判断したほうが良いと考えていました。 これが、私の(家族に対する)カミングアウトの物差しです。

  今振り返ってみると、当時の私には「カミングアウトするだけのパワーがなかった」と思いますし、「どのように説明すればよいか説明の仕方が分からない」という状況でした。
 言うまでもありませんが、カミングアウトしてもすぐに理解してもらえるとは限りません。しかし、伝えた以上は理解してもらえるまで伝え続けていかなければなりません。一方で、相手の理解を急いてはならないのです。そのためには、伝える側のパワーと理解してもらえるのを根気強く待つ姿勢が求められると思います。
 また、想いだけでは、相手の理解を得られない可能性が高いです。特に、相手が同性愛についてネガティブな印象を持っている場合は尚更です。誤解や偏見に対して、なるべくわかりやすく正しい知識や情報を伝える必要があります。相手がストレスなく納得してもらえる説明の仕方や説明すべきポイントをまとめておいた方が良いでしょう。
 

職場において

 

 私の場合、職場においては、親しい数名の同僚にはカミングアウトしましたが、基本的にクローズで通しました。ただ、対両親とは異なり気持ちが揺れ動くことがありました。両親とは離れて暮らしていましたが、同僚とは毎日顔を合わせますし、容赦なく彼女や結婚のこと、オネエやゲイのことを話題にする人もいたからです。

 20代の私は怖いもの知らず。ゲイであることを肯定はしませんでしたが否定もしないといった態度でした。職場が新宿三丁目に移転し窓から二丁目が見える場所にあったにもかかわらず、勤務後にそのまま二丁目に遊びに行くなど、今思うと若かったなと思います。目の前の楽しさの方が優先してしまい、いろいろな意味で自分のことや先のことを考えなかった時期です。もし、職場の人に強めに聞かれたら、あっさりカミングアウトしていたかもしれません。ただ、それはしっかりとした理由がない、つまり自分の物差しがないカミングアウトであったであろうことは間違いありません。

 30代で転職すると、環境や自分の気持ちに変化が現れます。上司ではなく同僚に結婚している人が多くなり、結婚の問題が現実的に迫ってくるようになりました。私にとって最も鬱陶しかったのは飲み会です。「彼女いるの?いるなら写真見せてよ。」「結婚しないの?実はコッチなんじゃないの?」20年前のことなので、30代で独身だと目立つのです。20代の頃の怖いもの知らずの自分は影をひそめていたので、それらの言葉はボディーブローのように少しずつ私に効いていきました。
 あー、もう面倒くさい!そうです、ホモですよっ!と大声で叫びたいと思ったことは何度もあります。いや、常に思っていました。しかし、もし感情に任せてそれをやってしまったら、まさに自分の物差しがないカミングアウトで、どのような結果になったかはわかりません。カミングアウトは、相手に伝えればそれで終わりではありません。伝えることは一つのゴールではありますが、同時に新たなスタートでもあります。すぐに理解してもらえない場合はもちろん、理解してもらえたとしても、その後の人間関係の中で思わぬ反応が出てくることも覚悟しておいたほうが良いかと思います。

 少し横道にそれますが、私の場合は「ホモと思われても構わないが、そのことをとやかく言わせはしない」という気持ちが強くありました。ホモと思われてもいいと思いながら、後ろめたさに近いような気持ちがあったのかもしれません。その気持ちは私を仕事に向かわせました。仕事での成果を上げることはできましたが、同時にメンタルの不調を引き起こすことにり、自分の時間を蔑にすることに繋がってしまいました。ゲイであることを完全に受け容れることの難しさを感じた30代から40代前半であったと思います。

 そして今、このブログやホームページ上で私はカミングアウトしています。仮にカミングアウトすることで何か不利益が起こったとしても、自分でその責任は負える状況にあると考えています。私がカミングアウトしてカウンセラー活動を行っている理由については、下記のブログ記事に書いてありますので、よろしかったら覗いてみてください。

『私がゲイであることを公表してカウンセリング活動をする理由』

 

まとめ

 私の拙い経験から、カミングアウトについて書かせていただきました。最後にポイントをまとめておきます。

  • カミングアウトについて、自分の物差しを持っておいた方が良いです。言いかえれば、何のためにカミングアウトするのか、考えておくということです。
  • カミングアウトにはパワーと根気強さが必要です。それらが今の自分にあるかどうか、考えてみてください。
  • 一方的に相手に想いを伝えるだけではうまくいきません。相手の考え方や精神状態を把握したうえで、何をどのように伝えればよいかしっかりまとめておきましょう。
  • カミングアウトすることがすべてのゴールではありません。カミングアウトすることで様々な影響が出ることは心に留めておきましょう。
  • 自分がゲイであることをしっかりと受け容れておきましょう。

私は、カミングアウトについてどちらかというと積極的でないこともあり、やや偏った内容になっているかもしれませんが、ご容赦ください。ひとつの考え方として捉えていただければ幸いです。

井上伸郎

井上伸郎

カウンセリングルーム「こころの案内人」の代表。セクシュアリティに関わらず様々な方々の「悩みの解決」や「目標の達成」を、解決志向型カウンセリングによってお手伝いしています。

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