こころの案内人のブログ

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その”関連づけ” やめませんか? ~管理職になった30代ゲイのご相談事例~

 ゲイなどのセクシュアリティに直接関わる悩みや問題ではなくても、悩みの背景にそういったことが存在していることがあります。一方で、ついつい自分の問題点を「ゲイだから・・・」と関連付けてしまうことはないでしょうか。常々申し上げていますが、悩みの原因は一つではなく複合的に絡み合っている場合が多いので、ゲイであることが無関係ではないにしろ、さほど大きな要因ではない場合もあるはずです。今回は、あるご相談者の事例から、「自分はこうだから、こういう結果になっている」と決めつけてしまいがちな思考について考えます

※ご相談者には、掲載の了承はいただいています。個人が特定できるような情報は掲載しておりません。

「結婚圧力問題」から「独身半人前問題」へ

  
 

周囲からの圧力

 生涯未婚率の男性が23%に上る今、3~40代の男性が独身でいたからといって珍しい話ではありません。とは言うものの、ゲイにとって結婚圧力は面倒な問題です。今回は職場に絞って話を進めますが、家庭での圧力の場合は面倒だけでは済ずに深刻な問題になる場合も多いでしょう。
 
 職場での結婚圧力とは、読んで字のごとく「結婚しないの?」「彼女はいないの?」という質問を度々受け、程度の差こそあれ結婚を強要される(あるいは、強要されているように感じる)ことです。さらには「そろそろ結婚して親を安心させてやれよ」といった説教や、「結婚しないってことは、もしかしてホモ?」といったセクハラまでいろいろです。
 こういった発言は、いじめやハラスメントに発展しない限りは、こちらが受け流しておけば次第に収まる場合も多いのですが、評価に影響するようですと受け流しておくわけにはいきません。例えば、上長の発言などから、明らかに独身であることを理由に正当な評価を受けていないという場合は、人事や部門の責任者に相談する必要があるでしょう。ただ、不当な人事評価が客観的に見て明確ではない場合、こちら側から指摘や相談ができにくいため、解決が難しい問題になってきます。

ご相談者の事例

 今回、事例として取り上げるご相談者は、今年課長職に就かれた30代のゲイの会社員の方です。部下は10名弱。成果を上げようと日々奮闘していらっしゃるのですが、なかなか部下のモチベーションを上げることができないという悩みでした。

 お話を伺っていますと、「部下の気持ちが分からない」「部下に遠慮がある」との発言が出てきました。部下の中にはご相談者と同じ年齢の人もいますが、ほとんどが年下(ほぼ同年代)です。何が遠慮なのかお尋ねすると、家庭を持っている部下に対して気が引けるというのです。つまり、社内での立場は自分の方が上でも、会社から一歩出ると相手は立派に家庭を築いていて、そのことにご相談者は引け目を感じていたのでした。

 例えば、飲み会やランチタイム、ちょっとした休憩での会話で、家庭やお子さんの話が出て皆が盛り上がる中、何となく居心地の悪さを感じるのだそうです。それだけではなく「人間として一人前になれていないような気がする」と仰るのです。明確には言葉にしませんでしたが、「ゲイだから、家庭を持った人の気持ちはわからない」というニュアンスのことも仰っていました。部下をリードすることができなくなってしまい、このままでは信頼を失ってしまうのではないかと、不安に思っていらっしゃるようです。 
 

本当に関連性はあるのか

 

自ら圧力を作りだしている状況

 ご相談者の悩みを、皆さんはどのように受け止めたでしょうか。ご相談者が、このような考えに陥った背景は次のように考えられます。

  • 今の社会においては結婚は幸せの象徴のひとつで、幼いころからその価値観に触れてきた。
  • 結婚して家庭を持つことで、幸せな生活を送っている人たちを数多く知っている。
  • 結婚して一人前という声を、少なからず聞いている。
  • 年齢が30代に入り、結婚圧力が現実的なものになっている。

 ご相談者のお気持ちは大変良く理解できます。一方で、重要なことは、ご相談者が「どうなりたいのか」ということです。解決志向型カウンセリングでは、この「どうなりたいか」という解決イメージをとても大切にします。このご相談者の解決イメージは、「信頼され、成果を出せる課長になること」でした。(実際のカウンセリングでは、この解決イメージをさらに具体的にしていきます。)逆に言うと、今はそのような課長ではないということになります。こう考えると、「信頼されていない(かもしれない)」「成果を出せていない」ということと、自分がゲイであることには何ら関連性がないということがわかります。結婚圧力を周囲から受けるのではなく、自ら圧力を作り出してしまい、そこから抜け出せなくなっている状況と言えます。

 ゲイであることを受け入れていても、知らず知らずのうちに抑圧したりプレッシャーを受けたりしていると、このような思考に陥る場合があるという事例でした。また、自分のセクシャリティに対して葛藤を抱えていたり、ネガティブな感情を持っていたりすると、さらにこのような思考に陥りやすくなりますので注意が必要です。

カウンセリングでは、どのように対応するか

 一般的なカウンセリングですと、ゲイであることと自分の悩みとに関連性が無いということをご相談者にわかってもらうために、「個人化(何でも自分と関連付けること)」や「責任転嫁」という思考パターンを修正する方法が考えられます。これも、有効な方法のひとつですが、時間がかかるというデメリットがあります。時間がかかっている間もご相談者の苦しみは続き、この方の場合ですと本当に部下の信頼を失ったり、業績の悪化を招いたりする可能性があります。

 一方、解決志向型カウンセリングでは、先ほども述べたように「どうなりたいか」という解決イメージに焦点を合わせ、そのイメージに近づけるように行動を起こしていきます。したがって、ゲイ云々といったことに触れることなく、また、思考パターンについて意識することなく解決に向けて進むことが可能となるのです。

井上 伸郎

井上 伸郎

カウンセリングルーム「こころの案内人」の代表。ご相談者の「わかってほしい・解決したい・変わりたい」にお応えしながら、解決志向型カウンセリングによって「悩みの解決」や「目標達成」のお手伝いをしております。セクシュアルマイノリティの方々の支援も行っています。

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