こころの案内人のブログ

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LGBTトイレ問題を考える ~配慮とは何だろう~

 渋谷区役所の「だれでもトイレ」をはじめとするLGBTトイレの問題は、すでにネットその他で活発な議論がなされていますが、あらためて何が問題なのかを考えてみます。

デザインそのものについての問題

LGBTをどのように理解しているのか

 

 タイトルに使っている画像は、渋谷区役所仮庁舎の「だれでもトイレ」に掲示されているピクトグラムです。皆さんご存知のいわゆる多機能トイレで、男女の区別なくどなたでも使えますよ、おむつが交換できる台も設置していますよ、車いすの方にも対応していますよ、というトイレですね。それを言語ではなく視覚的な図で表現しているのがピクトグラムです。

 ここでは、5つのピクトグラムが表記されていますが、やはり違和感を抱かざるを得ないのが左上の「3人の人が手をつないでいる」記号でしょう。真ん中の人はLGBTを表しているものと思われますが、私には半分だけスカートをはいているように見えます。「LGBTって男と女の間みたいなもんだよね、じゃあ半分スカートはかせよう。それだけだと分かりにくいからレインボーカラーを塗っておこう!」といった、少々乱暴な作り手の考えが見てとれます。つまり、LGBTに対する理解はその程度であったということではないでしょうか。
 この記号から受ける印象は人それぞれでしょうが、私は小学生の頃に「おんなおとこ!」とからかわれたことを思い出し、大変不快です。百歩譲ってデザイナーの方に悪気がなかったとしても、この程度の理解でデザインしてしまったことは問題です。さらに、このデザインにOKを出してしまった渋谷区の感覚も理解できません。そして、2年近く経過しても何ら手を打たれていないこともです。

 自治体として、LGBT(セクシュアルマイノリティ)に目を向けていることについては敬意を表しますが、しかし、決して急がず慎重に対応していただきたいです。対象者ファースト、アピールは二の次です。

まさにピクトグラムを剥がす場面に遭遇

 

 渋谷区のだれでもトイレと同じようなピクトグラムを導入した、ある大規模小売店があります。実は、筆者がその小売店のトイレに立ち寄ったところ、まさにピクトグラムを剥がしているところでした。作業中の方に「なぜ剥がしているのですか?」とお尋ねしたところ、困った表情をされながらも「苦情が多かったから」と答えてくださいました。現在は「みんなのトイレ」という名称ですが、当初は「LGBTトイレ」という名称だったそうで、それでは苦情も来るようなあ・・・と思ってしまいました。

  既に剥がされているので写真は掲載しませんが、そのピクトグラムも半男半女のようなものでした。LGBTをどのように理解してデザインを考えだしたのか、また、そのデザインにOKを出したのか、疑問に思うところは渋谷区役所の場合と同じです。ただ、苦情によって取り外すという対応をしているところに差があります。その小売店のホームページを拝見しますと、いろいろな横文字が踊っており私には難しいのですが、要するにすべての人に同じようにしあわせになってほしいというお考えのようです。ぜひ、それを実現するためのサービスを展開していただきたいものです。

 ちなみに、そちらの店舗では多機能トイレのアイコン(フロアガイドなどに表示するアイコン)を車椅子のデザインにしているのですが、それにも改善の余地があるとお考えのようで、名称と併せて検討していくと対応してくださった方は仰っていました。今後の動きに注目したいと思います。

 

LGBTを一括りにしている問題

 

困っているのは誰なのか?

 筆者はゲイですが、男性用トイレに入ることで困ったり苦痛を感じたりしたことはありません。おそらく、レズビアンやバイセクシュアルの方も同じではないでしょうか。つまり、LGBTで言えば、「LGB」はトイレについてあまり問題を抱えていないということなのです。一方、トランスジェンダー(T)の方の中には、問題や苦痛を感じていらっしゃる方も多いかと思われます。ですから、トランスジェンダーの方々が快適にトイレを使えるようになるにはどうすればよいか、という視点で考えるべきところを、LGBTで一括りにして「LGBTトイレ」などという名称にするので、私たち当事者は戸惑ってしまうのです。
 冒頭から何度も書いてきましたが、ここにもLGBTに対する誤解や理解不足が見られます。「誰が困っているのか」「何をすればその方の助けになるのか」という、超基本的なことを押さえておけば、今回のようなトイレ表示と名称は誕生しなかったでしょう。関わった方々の誰も突っ込まなかったのか、本当に不思議に思います。

配慮>アピール

 まず、トイレに限って言えば、多機能トイレを増やすことでいわゆるLGBTに対するトイレ問題は解決すると私は思っています。そして、そこに「LGBT」の表示や新しいアイコンは必要ありません。なぜかと言うと、あったら入りにくいからです。極めて単純なことです。
 相手が気遣わなくて良いように気遣うことが配慮や支援ではないでしょうか。「どうぞ、どうぞ、こちらがLGBT用トイレでございます!」と言われたのでは、入りにくくなるのも当然です。ところが、配慮する側にアピールしたいという気持ちが生まれてくることがあります。それは「周囲に認めてほしい」という程度のものであれば可愛げがありますが、アピールの先に何か見返りを求めているとなると少々いただけません。例えば、いわゆるLGBT市場を狙ってのものなどです。(LGBT市場と言うものが存在するかどうかはわかりませんが)いや、狙っても良いのです。結果的に当事者にとって有益であれば。良いのですが、悟られないようにセンス良くやっていただきたいものです。

 

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井上伸郎

井上伸郎

カウンセリングルーム「こころの案内人」の代表。セクシュアリティに関わらず様々な方々の「悩みの解決」や「目標の達成」を、解決志向型カウンセリングによってお手伝いしています。

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