こころの案内人のブログ

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『3月・月曜・中年男性』が自殺対策のキーワード

3月が「自殺対策強化月間」ということをご存知でしょうか。自殺者数が最も多い月が3月なのです。
自殺なんて自分には関係ないと思う方も多いかもしれません。確かに普段の会話に話題として上るものではないですし、普通に生活している方にとっては差し迫った問題ではないでしょう。しかし、全く無関係であると言い切れるものでもないのです。
「自殺対策」「自殺予防」というと少し構えてしまうかもしれませんが、こころのケアの延長線上に自殺予防もあると考えることはできないでしょうか。
今回は、普段あまり触れる機会がない自殺の実態についてお伝えしながら、こころのケアについても触れていきます。

 

日本の自殺の現状

 

厚生労働省の「自殺対策白書」のデータをもとに、日本の自殺の現状について説明します。

   

1.”死因順位1位”の衝撃

 

平成27年の自殺者数は2万4,025人でした。前年と比べ1,402人の減少です。平成10年以降14年連続3万人を超える状態が続いていましたが、その後4年連続で3万人を下回りました。
一方、同じく平成27年の交通事故死者数は4,117人です。交通事故のニュースは大きく報じらるのに対して、自殺についてはあまり取り上げらることがないので気づきにくいですが、自殺者数は交通事故死者数の6倍近いのです。

下の表は、平成26年における年代別の死因順位です。(平成27年「自殺対策白書」より)

15~39歳の各年代別の死因の第1位は自殺となっています。先進7か国の中で15~34歳の死因1位が自殺という国は日本だけです。日本における若年層の自殺が、いかに深刻な状況かということがお分かりいただけると思います。
40歳以上になると三大疾病による死因が増えてきますが、年齢が高いということを考えると理解できる原因です。その中でも40代の2位、50代前半の3位に自殺が入っていることを見ますと、日本においての自殺は、若年層だけでなく各年代共通の大きな問題と言えるでしょう。

 

2.3月の月曜が最も多い

 

平成27年における月別の自殺者数を見ると、3月が最も多く2月が最も少なくなっています。また、曜日別に見ると、月曜日が最も多く、土曜、日曜は少なくなっています。
例年この傾向が続いていることから、内閣府は3月を自殺対策強化月間と定めました。

 

3.40~60歳代の男性が4割を占める

平成27年における自殺者全体の男女構成比は、男性が69.4%、女性が30.6%となっており、男性が7割を占めています。また、年代別にみた場合でもすべての年代で男性が女性を上回り、特に20歳代から50歳代までは男性が7割以上を占めています。

下のグラフは、平成27年における男女別の年代別の自殺者数の構成割合です。(平成27年「自殺対策白書」より)

 

円グラフの右側の40歳代男・50歳代男・60歳代男の割合を合計すると35.8%になります。いわゆる中年男性が4割近くを占めていることになります。

 

4.最も多い動機は健康問題

 

自殺の動機については、最大3つまで拾い出し集計しています。その結果、平成27年における自殺の動機で最も多かったのは「健康問題」で、次に「経済・生活問題」「家庭問題」「勤務問題」となっています。この順位は前年と同じ結果です。

ただし、自殺の動機は非常に複雑であると予想されます。健康問題に至る背景には経済の問題や家庭の問題が隠されているかもしれません。調査には限界があるため致し方ありませんが、どれか一つだけが自殺の動機となるということではないと思われます。

 

 

現状から見えてくるもの

 

1.3月に自殺が多い理由 

3月は、仕事の面でも生活の面でも変化が多い時期です。
まず、多くの企業が3月に決算期をむかえます。業績が好調であれば問題ありませんが、業績不振によるリストラや倒産による失業が起こる時期でもあり、精神的に追い詰められる人も多く出る可能性が高い時期といえます。また、人事異動が発表される時期でもあります。不本意な異動、降格、非正規社員の雇止めなどの場合、不安に陥る人も多いでしょう。生活面では、卒業などお子さんの自立により親としての役割を終えるという安堵と共に、空虚感や孤独を感じて精神的に落ち込む人も出てきます。
このように、大きな変化に直面したり、不安定な状況に追い込まれたりすることが多い時期が3月と言えます。

 

2.男性は悩みを抱え込まずに相談を

 

自殺者全体の男女比は、男性が7割を占めています。なぜ、これほど男性の自殺者の方多いのでしょうか。

厚生労働省の「健康意識に関する調査」によると、ストレス解消に関して「不安や悩みがあった時にすることは何か」という質問で、「人と喋ったり、話を聞いてもらう」と回答したのは、女性では36.2%と比較的高い値を示したものの、男性では13.1%にとどまりました。

同調査では、さらに「不安や悩みを誰に相談するか」を尋ねていますが、女性では、相談する相手の第1位、2位は「友人・知人(28.4%)」「配偶者(27.5%)」で、「相談する人がいない」と答えた人が21.3%いました。一方男性では、「配偶者(35.9%)」が第1位ですが、第2位は、なんと「相談する人がいない」の35.7%。「友人・知人」と答えた人は12.2%にすぎませんでした。
これらの調査結果から、男性は配偶者以外に相談する相手がいなく、そもそも相談をしないという実態がうかがえます。

男性は、相談できる相手を持つことが必要です。悩みを相談できるような信頼できる相手は一朝一夕にできるものではありません。また、年齢が高くなるほどそのような相手はできにくくなります。日頃より交友関係を広げ、その関係を大切にしながら信頼関係を築くよう心掛けていくことが大切です。

また、「男は弱音を吐いてはいけない」という考えに縛られないようにしてください。「相談することは恥ずかしいこと」とも思わないでください。自分は大丈夫と過信せずに、気軽に相談することを強くお伝えします。自殺という最悪な事態を回避するだけでなく、ストレスなく心身ともに健康に過ごすためにも、一人で抱え込まずに相談をなさってください。

 

3.負のプロセスを断ち切る

 

自殺の動機で最も多いのは健康問題ですが、健康問題の中で最も多い原因・動機はうつ病です。平成27年においては、原因・動機が特定されている自殺の約3割を占めています。自殺対策においてはうつ病の早期治療が重要ですが、うつ病に陥らないよう普段からこころのケアを意識することが大変重要になってきます。
そのためには、自分で自分をコントロールできなくなる前に適切な対処をし、負のプロセスを断ち切ることです。負のプロセスとは、たとえば次の図のような流れです。

 

人事異動を自分の力で変えることは困難ですが、それ以外のプロセスにおいて改善を試み負のプロセスを断ち切ることは可能なことです。ただ、プロセスが進めば進むほど自分で断ち切ることは難しくなり、うつ病に至る可能性が高まります。やはり、周りの信頼できる人に相談することです。相談する人がいない場合はカウンセラーなどに相談することをお勧めします。

 

最後に 

死という言葉が頭をよぎったことがある人はもちろん、自分は自殺なんてありえないと思う人でも、ストレスにさらされて生きています。負のプロセスが進んでしまわないよう「こころのケア」を心がけていただきたいです。私たちは、交通事故などの事故からは身を守ることは幼いころから教育されています。同じようにストレスや負のプロセス、自殺からも身を守るという発想を、ぜひ持ってください。

また、自分のことだけでなく、周りの人たちの様子にも気を配り”サイン”を感じ取ることも大切です。周りの人たちの「いつもと違う何か」に気づくことは、その人たちを気遣うことができるだけでなく、自分自身を大切にすることができるはずです。

井上伸郎

井上伸郎

カウンセリングルーム「こころの案内人」の代表。セクシュアリティに関わらず様々な方々の「悩みの解決」や「目標の達成」を、解決志向型カウンセリングによってお手伝いしています。

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