こころの案内人のブログ

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部下とのコミュニケーションに悩むあなたへ~部下の話を聞くポイント~

 管理職の方々は、仕事の多くの時間を部下などの「人とのかかわり」に割いているのではないでしょうか?それは、管理職の役割は自らが動いて実績を出すことではなく、部下が実績を上げられるようマネジメントすることだからです。「人とのかかわり」の中心は「話すこと」と「聞くこと」ですが、今回は「聞くこと」にスポットを当て、部下の話を聞くポイントについて考えていきます。
 

なぜ、部下の話を聞くことが大切なのか

 

1.コミュニケーションの満足度が生産性を高める

 企業においては生産性や効率性が重視されるため、企業に属する者も同じく生産性や効率性を高めるよう行動します。それはタスク重視の考え方につながり、ともすれば「人」を大切にすることを怠る可能性もあるのです。そのひとつが「部下の話を聞くこと」。管理職の中には、部下に報告を求めるものの極力短時間で済ませようとし、コミュニケーションよりもタスクの遂行に力を入れている方も多いのではないでしょうか。一方で、管理職からの指示命令すなわち「話すこと」が多くなると、コミュニケーションのバランスはさらに崩れていきます。
 
 ここで考えていただきたいのが、人が持つ「話したい」「わかってほしい」という欲求です。限られた時間の中で必要以上に長々と話すのは考えものですが、部下も「上司に話したい」言いかえると「しっかり話を聞いてほしい」と思っているのです。逆に欲求が満たされないと不満につながります。現にさまざまな調査において、職場の問題点としてコミュニケーションに関わることが上位に挙げられています。この欲求を満たしてあげることこそ、モチベーションを向上させ生産性を高めることに繋がるのです。
 

2.個人だけでなくメンバーの創造性を高める

 


 部下の話を聞くということは、一人ひとりの部下との関係が良くなるだけでなくチーム全体のパフォーマンスを向上させることに役立ちます。
 社の方針等に従いメンバー全員が同じ方向を向くためには、管理職がしっかりと指示命令を出すことが必要になるでしょう。しかし、一方的に指示をして部下の意見を聞かない、あるいは否定をするといった極端な指示命令型のマネジメントを行うと、部下は忠実に業務を遂行する半面自分の意見を言わなくなり、あなたが望む回答を探すように習慣づけられます。これは、部下が不満を通り越して学習性無力感(※)に陥っている状況です。これでは、部下の自立や創造性は阻害され、チーム全体の士気の低下を招くことになるでしょう。
 管理職であるあなたが話を聞く態度を示し、自由なコミュニケーションを促す環境を作り出すことでチームは活性化し、メンバーひとりひとりの自信と創造性の高まりによって業績の向上をもたらすことが可能になるのです。

※学習性無力感とは、抵抗や回避が困難なストレスに長期間さらされ続けると、そのような状況から逃れようとする行動すら起こらなくなる現象のことです。「自分が何をしても状況は変わらない」という思い(無力感)が、体験を通じて学習されるものです。

3.メンタルヘルス対策への効果

 

 「ラインケア」という言葉をご存知でしょうか。昨今、社員のメンタルヘルス対策が企業の重要な課題となっていますが、部長や課長といった管理監督者が、職場の環境改善を行ったり部下の状況を把握し相談を受けたりするなど、部下のケアを行うことを「ラインケア」といいます。今や管理職の仕事は、担当するチームの業績向上だけでなく、チームメンバーのメンタルヘルス対策にも及んでいるのです。
 ラインケアにおいても、部下とのコミュニケーションは大変重要です。日々のコミュニケーションの中で「いつもと違う部下」に早く気づくことができるからです。「いつもと違う部下」とは、例えば、表情に活気が無くなった、同僚との会話が少なくなった、業務に遅れやミスが出るようになった、といったことです。このような変化に気づき早めの対応をすることが、メンタル不調者を未然に防ぎチームの業務を維持することに繋がります。そのためには、部下の話に耳を傾けること、積極的に話しかけて様子を把握するなどのコミュニケーションが不可欠なのです。

※参考『15分でわかるラインによるケア(厚労省)』

 

部下の話を聞くポイント

1.関心があることを示す

 話しかけた相手にそっけない態度をされて落胆した経験はありませんか。こちらが話しているのに、無表情だったり関心がない態度をされたりすると、その人にはもう話をしたくないと思いますよね。上司と部下との会話でも同じことが言えます。忙しいからと、ついついパソコンを操作しながら話を聞いたり、部下の顔を見ようとしなかったりすることはありませんか。また、口には出さなくても”今忙しいオーラ”を出したりはしていないでしょうか。管理職の皆さんが多忙な事は承知していますが、ここは堪えていただきたいところです。

 カウンセラーは、ご相談者に向き合った時に「言語」と「非言語」の両方を使って、ご相談者に関心を持っているということを示します。「非言語」とは、顔の表情、視線、身体の姿勢、身振り手振りなどのことです。カウンセラーは、ご相談者がリラックスして話ができる距離に座り、身体と視線を向け、適度に相槌を打ち「積極的な態度」で話に耳を傾けているのです。
 管理職の皆さんにカウンセラー並みの傾聴スキルを要求はしませんが、少なくとも部下の顔を見て話を聞いていただきたいです。パソコンを操作する手を止め部下の方に体を向けただけで、関心を持って聞くという態度が十分に伝わり部下は話しやすくなるはずです。手が離せない時にも無下にはせず、緊急かどうかを確認したうえで、後で話を聞くことを伝えるようにしましょう。
 

2.「先読み」に注意する



 「関心を持って聞く態勢」ができたなら、できるだけ話の途中で口を挟まないようにしましょう。「わかった、こういうことだろう」と結論を言ってしまったり、自分の意見を述べ始めたりすることを避けるということです。中には要領を得ない報告や相談をする部下もいるかとは思いますが、ここもまた堪えていただきたいところです。先に述べた「関心のない態度」以上に、話をする側は落胆するからです。
 相手の話を遮り自分の話を始めてしまうのは、相手の話す内容を先読みしてしまうために起こることです。今までの経験から今回はこういう話だろう、この部下のことだからこういう話だろう、といった先読みで、これを始めてしまうと相手の話は耳に入らなくなってしまうのです。

 この先読みを防ぐには、カウンセリングの技法である「簡単受容」と「応答」を身につけることをおススメします。簡単に言ってしまえば、「簡単受容」はうなずきや「なるほど」「それで」といった相槌のことで、「応答」とはオウム返しのようにキーワードを伝え返すことです。「先方がそう言ってきたんだね。」「昨年と比較し減少しているんだね。」といった要領です。普段何気なく行っていることかもしれませんが、これらは’話を聞いていないとできないことです。能力の高い方や無駄を省きたいと思う方ほど会話において先読みをしがちです。先読みが癖になってしまっている方は、意識して相槌や応答をするようトライしてみてください。
 

3.部下を”報告・相談上手”にする

 管理職である皆さんが話をしっかりと聞いても、部下の話し方が良くないと内容が伝わらなかったり時間の無駄が発生したりします。ビジネスにおけるコミュニケーションでは、双方の伝える力と聞く力の向上が求められます簡潔に分かりやすく伝える力が不足している部下に対しては、指導が必要ですが、指導は話を聞き終えてからにしましょう。途中で話を遮らずに最後まで聞いてから指導をすることで、部下はその指導を受け入れやすくなるからです。
 「今話をしても良いか相手(上司)に確認する」「ポイントを先に話す」「判断してもらいたいのか、アドバイスがほしいのか、上司に求めるものを明確に伝える」など、話を聞き終えた段階ですぐに指導するようにしていきましょう。

 上司はしっかり聞き、部下はポイントを押さえ簡潔に伝える、双方の努力が生産性の向上と人間関係の円滑化をもたらしていくのです。

井上伸郎

井上伸郎

カウンセリングルーム「こころの案内人」の代表。ご相談者の「わかってほしい・解決したい・変わりたい」にお応えしながら、解決志向型カウンセリングによって多くの方々の「悩みの解決」や「目標達成」のお手伝いをしております。

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