年を取ったら丸くなるって本当? ~キレる中高年にならないために~

 「年を取ると丸くなる」という言葉があります。樹齢を重ねた柊(ひいらぎ)の葉が、徐々に丸い葉に変わっていく様子を人間になぞらえ、そのように言い表すようになったと伝えられています。一方、「キレる中年」「暴走老人」などという言葉を耳にすることが年々増えてきました。
 人は、年を取ったら丸く穏やかになるのでしょうか? それとも、キレやすく短気になるのでしょうか?そして、中高年にさしかかろうとしている”あなた”はいかがですか?

【目次】

◆年を取る丸くなるのか、キレやすくなるのか?
1.経験が視野を広め、慎重にさせる
2.キレる中高年が増えているのは事実 

◆キレる原因は何のか?
1.ストレスによる反応が自分に向くか 他人に向くか
2.変化のスピードに戸惑う中高年3.居場所のない中高年


◆キレる中高年にならないために
1.決して他人事ではない
2.ストレスと不安を溜めない
3.集中できるもの・自分の居場所を持つ


年を取ると丸くなるのか、キレやすくなるのか?

1.経験が視野を広め、慎重にさせる

 年齢を重ねてさまざまな経験を積んでくると、知識だけでなく物事を捉える視野が広がります。視野の広がりは、「自分は間違っていない、自分が一番正しい」という狭い考えから、価値観の違いを受け入れられるようにと人を成長させます。「そんな意見もあるんだ」「そういう人もいるよね」と思えるようになるということです。この視野の広がりによる言動の変化が、周囲の人たちからは「丸くなった」ように見えるのだと思われます。

 また、若い頃には、怖いもの知らずで自分の意見を主張しがちです。それが、経験を積むことで一方的な主張は慎むようになり、TPOに応じた対応を取るようになります。このことも「丸くなった」ように見える一因です。

2.キレる中高年が増えているのは事実

 駅のホームやタクシーなどにおいて、職員や乗務員に暴力を振るうという事件は時々耳にすることがあります。事件を起こす人には中高年が多い印象がありますが、実際にはどうなのでしょうか?

 日本民営鉄道協会では、大手民鉄16社(※)における駅員や乗務員等の鉄道係員に対する暴力行為の件数を発表しています。それによると、平成27年度は225件、平成28年度が189件、平成29年度が174件と減少傾向にあるようです。この3年間の年齢の内訳を見てみると、40代が「21%→17%→20%」、50代が「14%→16%→16%」、60代以上が「20%→21%→22%」となっており、40代以上で括ると「56%→54%→58%」となります。比較的未熟と思われる若年層よりも、中高年の割合が高く約6割を占めていることが分かります。
 キレる中高年が多いということを示すデータの一つと言えるかと思います。

※大手民鉄16社=東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄

キレる原因は何なのか?

 キレる中高年は、もともと気性が荒く短気でキレやすい人なのでしょうか? 中高年の暴力事件が報道される際、「普段はおとなしい人なのに・・・」などと関係者の証言も併せて報道されることがあります。このように、もともとキレやすい人だけが事件を起こしているのではなく、普段は暴力的ではないごく普通の人がカッとなって事件を起こしてしまっているのです。では、なぜ普段おとなしい人が、突然キレてしまうのでしょうか?

1.ストレスによる反応が自分に向くか、他人に向くか 

 自分で発散しコントロールできないほどのストレスを抱えた時、人はどうなるでしょうか。自信を失ったり、気分が落ち込んで抑うつ的な気分になったりするなど、メンタル面の不調をきたす人もいます。また、不眠や食欲不振、頭痛といった身体症状が現れる人もいます。このような方々は、ストレスによる反応が自分自身に向けられていると言えます。自分自身を攻撃していると言い換えることもできるでしょう。「自分はダメな人間だ」「今後も良くはならない」「もっと頑張らなくては」「どうせ誰もわかってはくれない」・・・ このような負の感情が、自分自身に向けられ自分を痛めつけてしまうのです。

 一方で、その反応が自分ではなく他人に向けられる場合があります。大きなストレスだけでなく、自覚は無いものの少しずつ溜まっていくストレスが溢れ出そうとしている時に、それは起こりやすくなります。例えば、ちょっとしたトラブルなどが起こった時、そのトラブルに対する怒りに日頃のストレスや鬱憤などによる怒りが加わり、自分でもコントロールできずに怒りが爆発してしまうのです。

  しかし、ストレスがあるのは中高年に限ったことではありません。にもかかわらず、なぜ中高年の方がよりキレやすくなるのでしょうか?

2.変化のスピードに戸惑う中高年

 いつの時代でも社会は変化するものですが、ここ2~30年の変化は私たちの想像を超えるものではないでしょうか。ITをはじめとする科学技術の進歩、急激に進む情報化や国際化、組織や働き方の変化、同質から個性化や多様化へ価値観の変化、そして高齢化などです。
 それぞれが良い悪いということではなく、私たちはこの変化に対応していかなければなりませんが、若年者に比べると中高年には適応のハードルが高いのかもしれません。それは、「年だから」ということで片づけられる問題ではなく、もちろん「能力に欠ける」ということでもありません。「こんなはずではなかったのに・・・」という中高年の心理が影響しているのではないでしょうか。
 
 例えば、仕事や職場ですが、かつてはピラミッド型組織で年功序列がほとんどでした。上司の言うことは絶対。中には理不尽な事を言ったりする上司や、逆に何も言わないものの「この人働いているのか?」と思うような上司がいたかもしれません。それでも我慢できたのは、ある程度の年齢になると役職につくことができ、給与が上がっていくという人事制度があったからです。
 しかしながら、最近は成果主義が導入される企業も多くなり、思うように給与が伸びない場合も出てきました。また、組織のフラット化や若手社員の意識の変化により、後輩社員との関係性もかつてとは異なってきています。自己意識や権利主張、あるいは承認欲求の強い若手社員が増えてはいないでしょうか。このような社員の対応を誤ると、「パワハラ」で訴えられる可能性もあるご時世です。上司だけではなく、部下に対しても必要以上に気を遣わなければならないのです。

 我慢しつつもコツコツと積み上げてきたものが通用しない時代。そのような変化に戸惑いながら、必死に適応しようとする中高年が「こんなはずではなかったのに・・・」と思うのは、無理もないことではないでしょうか。


3.居場所のなさを感じる中高年

 「こんなはずじゃなかった」という思いを持つのは、職場だけとは限りません。家庭においてもあり得ることです。マイホームのローンや教育費を抱え、一生懸命働いているにもかかわらず、奥さんや子どもたちからは家庭を顧みないと言われ、早く帰宅したらしたで何か居心地が悪い。子どもたちとの会話は年々少なくなってきて、奥さんは家庭の外にコミュニティを持ち元気を増している。このような、一昔前のテレビドラマのようなことが現実に起こっているのです。

 「居場所がない」というのは、物理的な場所だけではありません。人生のピークを過ぎてしまったのではないかという停滞感、職場において昇進昇格の見込みが無くなったという失望感、役職定年により、待遇は維持できたものの部下を持たなくなったという寂しさなど、「こころのより所」を失うことも居場所のなさと言えるでしょう。

 この居場所のなさを感じることは、「自分は大切にされていない」「軽んじられている」という気持ちにもつながります。このような気持ちは、なかなか口に出して伝えることはできませんので、自分のこころの内に溜まっていき、「理解してもらえない」という苦しみに変わっていきます。
 このようなさまざまな負の感情をそのままにしておくと、やがて溢れだし、それが「怒りのもと」となっていく可能性があるのです。

キレる中高年にならないために

1.決して他人事ではない

 「自分はキレたりしない」「キレるなんてみっともないことはしない」そのように思う人も多いでしょう。しかし、決して他人事ではないのです。
 元々、人生の後半は自分自身の気持ちや家庭環境の変化が大きい時期。それに加えて、先に述べたように社会の変化も著しいのです。先が読めない状況の中ではストレスや不安を溜めやすく、そのストレスや不安を怒りに変えて「キレるスイッチ」を押してしまうような出来事は至る所に転がっています。

 キレる人には、元々怒りっぽい人ではない場合が多いことは先に述べたとおり。「みっともない」と思うようなキレる人に、自分がなってしまう可能性は決してゼロではないのです。

2.ストレスと不安を溜めない

 キレる背景には、ストレスや不安、孤独感、「こんなはずではなかった」という気持ち、さらにはそのような気持ちを「理解してもらえない」という心の叫びがあることをご説明してきました。そのような不安材料を取り除けばよいわけですが、なかなか難しいことです。特に「ストレスの原因」は、自身の努力だけでは取り除くことができないことが多くあります。例えば、職場の人事や評価、そりの合わない上司や部下との関係構築、会社の方針の変更、社会の変化などがストレスになっていたとしても、その原因を取り除くことは多分難しいでしょう。そうなると「ストレスはあるもの」と認識し、そのストレスをどう対処するか考えた方がよさそうです。

 ストレス対処に有効な手段のひとつは、「気持ちを吐き出す」こと。愚痴をこぼすことと言ってもよいでしょう。「何だそんなことか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、愚痴を吐くことを我慢して胸の奥にしまい込んだストレスを甘く見てはいけません。それが、後々悪さをする可能性があることは、今まで説明したとおりです。
 ところで、あなたは愚痴をこぼしていますか?年齢とともにプライドも高まり、愚痴をこぼすことをためらうようになるものです。それでも、女性は比較的うまく愚痴をこぼして(こぼし合って)気持ちのバランス保っている方が多いようですが、男性は苦手な方が多いのではないでしょうか。

 ここは思い切って、気持ちを吐き出すことをお勧めします。吐き出すなら思い切って吐き出す、これがコツです。「吐き出したら、もうその後はそのことを考えない」くらいに思ってください。同じことを何度も話すと、そのたびに嫌な気持ちも併せて思い出し、「反芻する」癖がついてしまうからです。愚痴はストレス解消に有効ですが、ほどほどにして後をひかないようにしていきましょう。


3.集中できるもの・自分の居場所を持つ

 職場にも家庭にも居場所がない、そんな人は「もう一つの居場所」を探してみてはいかがでしょうか。(もちろん、職場や家庭、特に家庭での居場所を持てるよう、家族との関係を見直すことも大切なことです。)
 行きつけの飲み屋などで馴染みのマスターやママさんと語るというと、日本のサラリーマンの定番かもしれませんが、これも立派な居場所です。また、同じ趣味を持つ仲間や習い事の仲間も居場所です。そういうものを持っていないという方は、自治体の情報誌をめくってみてください。無料や安価な公開講座が多く開かれています。そのようなカジュアルなものだけでなく、本格的な資格取得の勉強もよいでしょう。ネットで探す方法もありますし、SNSで繋がるという方法もあるでしょう。
 
 このように活動することは、居場所を探すだけでなく物事に集中するということでもあります。集中して楽しめるものを持つことは、気持ちをリフレッシュさせ余裕を持つ効果もあるのです。「今更、そんなこと・・・」などと言わずに、腰を上げてみることをお勧めします。

 宣伝になって恐縮ですが、「気持ちを吐き出す」ことにカウンセリングを活用することもお勧めです。当カウンセリングルームでは、体験カウンセリングやメールカウンセリングなど、利用しやすい料金でご用意しています。お力になれるかと思いますので、ぜひお考えください。

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